所謂生活改良家

1章6節356-9

「問題はただその次々の実験の途中、やたらに理想形だの完成だのといふ宣伝語を、真に受けることがよいか悪いかで、所謂生活改良家は少しばかりその説法がそゝつかしかつた様に思はれる」(356-8~9)とは、第15章の章題が「生活改善の目標」であるように、1920年1月に文部省内に半官半民の団体として設立された生活改善同盟会の活動や、それを中心に拡がった生活改善運動を、暗に批判している。第8節の「生活を改良する望み」(363-30)であるとか、第7節の「新しい洋服主義者にもし不親切な点があるとすれば、強ひてこの久しい行き掛りと絶縁して、自分等ばかりで西洋を学び得たと、思つて居ることがやゝそれに近い」(359-16~17)も、同様の見方であり、生活改善運動による様々な動きに対して、やや斜に構えた柳田の姿勢が、そこに現われている。[岩本]

新らしい洋服主唱者にもし不親切な点があるとすれば~新旧雑処して残つて居たといふこと生活を改良する望み