四月始には、これを摘み取つて戸口に挿し、又は高い樟の尖端に飾つて、祭をするのが村々の習はし

1章4節348-4

ここで紹介されている四月始の習わしは、一般に「卯月八日」と呼ばれている年中行事であり、かつて広域に見受けられたものである。桜の花見が普及する以前の花見の機会、または山遊び・磯遊びの機会でもあった。とりわけ、高い棹の先端に摘み取った花を飾るものは天道花、八日花、夏花、立て花などともいう。民俗学の議論では、農事をはじめる時期にあたって、田の神の来臨を願う依り代として解釈する見方もある(浦西勉「卯月八日」『日本民俗大辞典』(上)吉川弘文館、1999年、171頁)。柳田もまた、『祭日考』ほかで、神の来臨との関連で天道花に言及している(1946年、⑯51)[及川]

花見盆花門に祭をする季節信仰