明治二十九年の綿花関税の全廃

1章5節353-19~20

1896年法律第57号「輸入綿花海関税免除法律」による措置。同法の全文は、「外国ヨリ輸入スル綿花ハ明治二十九年四月一日ヨリ海関税ヲ免除ス」。紡績業の勃興にともなって輸入綿花の使用量が増大してくると、紡績業界では、綿花輸入税と綿糸輸出税は、コスト上昇の要因で国際競争力を削ぐものであるとして、廃止を要求する声が高まった。これに対し、国内の綿花生産者は、大日本農会を中心に綿作保護運動を展開した。当初は関税収入が減少することを理由に政府は躊躇していたが、1894年にまず綿糸輸出税を、そして2年後に綿花輸入税を廃止した。これによって紡績業の発展は加速したが、国内の綿花栽培は大打撃を受けた。柳田は、この法律などなくとも日本綿は同じ運命をたどったと説く。なお、綿花輸入税の全廃と同じ日に、輸入羊毛の関税も全廃されている。[山口]

→紺を基調とする民間服飾の新傾向全国の木綿反物を、工場生産たらしむる素地紡績の工芸が国内に発達してくると共に